2011年1月25日火曜日

「情報過多の時代」の鍵は「キュレーション」




Forrester Research社のアナリストSarah Rotman Epps氏は、Arstechnicaの記事等において、iPadは「キュレーティッド・コンピューティング」の時代の幕開けを告げるものだと評して話題になった。しかし、「キュレーションの時代」は、「キュレーティッド・コンピューティング」よりずっと前から始まっている。

[「キュレーティッド・コンピューティング」とは、機能が絞られているが、使いやすい機器のことを指す。キュレーションとはもともと、博物館や美術館等で作品や資料を整理・管理・研究し、わかりやすい展示を行なう作業のこと]

このデジタル情報過多の時代、私たちはあまりに多くの音楽やソフトウェア、ウェブサイト、フィード、人々やその意見等にとり囲まれている(日本語版記事)。こういう時代において、「キュレーション」はすでに、われわれが世界を見る見方の基本を作っている。iPadは、この状況を認識した最初の技術にすぎない。

具体的に見ていこう。

1.ウェブの自由さを、ソーシャルサイトがキュレーション

誰もが自分のウェブサイトを作ることができるようになった当時、人々は、その制限のない自由さに最初は喜んだが、大半の人は結局、その状況に尻込みした。HTMLの学習とページの更新に多大な時間を費やしたとしても、友人が自分のページを見つけてくれるという保証はなかった。

このような理由から、個人制作のサイトというのは、いまだにコンピューター好きのギークのものであり続けている。いっぽうで、『Facebook』『LinkedIn』『Tumblr』『Flickr』などの前もってページを準備してくれるソーシャル・サービスは、プライバシーの懸念があるにもかかわらず繁栄している。つまり、われわれはウェブの自由さに直面したが、ソーシャルサイトによるキュレーションのほうを選んだのだ。

2.「音楽批評」は「音楽キュレーション」へ

かつては、音楽ファンは事実上アルバムを買うしかなかったため、自分の選択に慎重になる必要があった。そこで、購入決定のガイド役として頼みにされたのが、「音楽批評家」と呼ばれる、出版社に雇われた人々だ。人々は、ラジオでたまたま耳にするか、ヘッドフォンで無料試聴できるレコード店で列に並ぶ以外、その曲がどう聞こえるのか知る方法がなかったのだ。

現在人々は、世界中のたいていのバンドの音楽について、『YouTube』『MySpace』『Spotify』、そしてファイル共有サービス『The Pirate Bay』などで、1分足らずで調べることができる。こうした状況のなかで、音楽評論家の役割はかなり縮小しており、批評よりもキュレーションが重要になっている。

ユーザーにとっては、お気に入りの音楽ブログが何かの曲に言及したという事実のほうが、その言及の内容よりも重要なのだ。誰もがその曲を、ダウンロードなりストリーミングなりして、自分ですぐに聞くことができるのだから。

3.ニュースは閉鎖系からフィルタリングへ

インターネットと『Google』が登場する前には、われわれには「キュレートされたニュース」しかなかった。当時、たいていの人にとっては、1〜2種類の紙の刊行物が「読むニュース」のすべてであり、それは閉じられたシステムだった。

ニュースがインターネットに進出し、ネットによるニュースの配信が始まると、アグリゲーションが重要になった。『Google News』で現在の出来事を検索すると、同じ話題について大量の記事が見つかる。また、報じられる出来事の数はこの10年で急上昇している。

こうした状況下で、再びキュレーションが重要になった。ニュースの記者と編集者は、情報の海をヒゲクジラのようにフィルタリングして、真実で今日的で興味深いものを見つけようとしている。ほかのことに日々忙しい読者が、この作業を自分でやらなくてもいいように。

オリジナルのニュースを作り出す者は、以前と同様に重要だ。おそらくは、以前よりも重要かもしれない。「患者第1号」には誰もがリンクバックするからだ。

4.機能をキュレートされたデバイス

『Kindle』、携帯電話、デジタル音楽プレーヤー、GPSなど特定用途のデバイスは、機能をシンプルにキュレートすることで、汎用のデスクトップ・コンピューターを上回る体験を提供している。携帯型のデジタル音楽プレーヤーや大画面のテレビなど、メディア消費用に設計されたデバイスの場合はとくにそうだ。

われわれは、ニュースリーダーのフィードやTwitterなど、ネット上で出会ったさまざまな内容をInstapaperを使って保存して、機能が絞られたiPadやkindleで読んでいる。

こうしたデバイスと、ギーク好みの汎用コンピューターは、ちょうど、SNSサイトと自作のウェブページが両立するような形で、これからも両立していくだろう。

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